回転粘度計内部のフレッシュモルタルの変形状態の可視化

Visualization of Deformation of Fresh Mortar in Rotation Visco Meter
三島直生
1. 回転粘度計とは?
 回転粘度計とは,もともとオイルなどの均質な粘性体の粘度を計測するために作られた装置です(写真1は本研究室で試作したもの)。構造は比較的単純で,円筒形の容器に試料を入れ,その中に円筒形のロータを入れて回転させたときの抵抗トルクから試料のせん断抵抗を,回転速度からせん断ひずみ速度をそれぞれ計算します。ただし,正確に測るためには試料が変形した領域を計測する必要があります。写真2は均質粘性体の変形を示します。

2. 回転粘度計によるフレッシュコンクリート,モルタル,ペーストのレオロジー定数の測定
 現在,フレッシュ状態のコンクリート,モルタル,ペーストのレオロジー定数を測定するために, 最も一般的に用いられているのが回転粘度計です。しかし,回転粘度計はもともと均質粘性体の 測定を目的に作られているため,フレッシュコンクリートのような不均質かつ降伏値を持つような 物質に対して適用する際には,その変形状態の把握が非常に重要となります。
 本研究では,回転粘度計による測定結果の妥当性を検証するための基礎実験として,回転粘度計内部 のフレッシュモルタルの変形状態の可視化を試みました。

3. フレッシュモルタルの変形状態 
 写真3は,内円筒に金属製ロータを用いた場合ですが,内円筒表面で 滑りが発生し,試料が全く変形していないのが解ります。(しかし,コンシステンシー曲線はこの状態 でもキレイに測定できたりするので,一般にこのような状態で計測されたレオロジー定数が論文などにも 用いられているのではないかと心配しています。)表1は,内円筒を硬化モルタルに変更して測定した結果の一部です。調合や経時変化の程度などに よりフレッシュモルタルの流動性が変化し,それにより回転粘度計内部での変形状態も変化しています。

4. 今後の課題
 今後は,試料の変形状態と測定されるレオロジー定数の関係を把握し,レオロジー定数の定量化を進めていく予定です。

【参考文献】
 三島直生,畑中重光:回転粘度計内部のフレッシュモルタルの変形状態の可視化,第60回セメント技術大会講演要旨,pp.98-99,2006.5
 三島直生,大村修太朗,畑中重光:回転粘度計を用いたフレッシュモルタルのレオロジー性質の評価手法に関する基礎的研究,第62回セメント技術大会講演要旨,2008.5

写真1 本研究室で作成した回転粘度計
写真2 均質粘性体の変形状況
写真3 金属製ロータを用いた場合の変形状態
表1 モルタルの変形状態